DJI 最新ドローンM300RTKとはどんなものなのか?徹底解説1 本体編
こんにちは!スカイアイジャパンの今井です。
発売されてから半年ほど経ったDJI M300RTKですが、そろそろ使用感や実用面も含めてデータが出揃ってきた感じがあります。
ただ、やはり産業用ということもあり情報が少ないのも事実です。そこで、本記事ではDJIのオフィシャル動画を元に実際はどうなのか?というところをM300 RTKの兄貴分でもあるM200シリーズと比較しながら動画より少し掘り下げた形で詳しく解説していきます。
実際のレビュー記事はこちら
これですね。
詳しい個々の機能や実際の使用感などは別記事にしてあるので、あくまでここでは「公式で紹介されている機能をもう少し詳しく」という位置づけです(とは言っても結構詳しく書いてしまいました・・・)。
Matrice(マトリス)シリーズについて
まずマトリスってなんぞや、という話ですがDJIは産業用のドローンに「マトリス」というペットネームをつけていて、これまで
- M100 (2015年6月) 研究開発用
- M600 (2016年) 映画などの撮影用
- M200シリーズ (2018年6月) 多用途
- M300 (2020年5月) 多用途
という順番で発売してきました。仮に次にマトリスが出るとしたらM400で2022年でしょうか(笑)。
M100、M600はデザイン的にもまだまだ「無骨」という感じでしたがM200にきてとつぜん洗練された、より一般向けのデザインとなりました。
ただ、M100とM600はかなり特殊な用途になっているのでマトリスという名前は冠しているものの別と考えます。あくまでM300と比較するのはM200シリーズです。
M200シリーズの最大のウリであるデュアルジンバル(2台のカメラが搭載)、上方ジンバル(機体の上にカメラを搭載し、橋の裏側などを撮影する)ができるということで当時私も「すげぇ!!ドローンの革命だ!!」と思ったものでした。
さて、そんなM300 RTKですが何がすごいのでしょうか?M200シリーズと比べどこが進化したのでしょうか?それでは見ていきましょう。
M300 RTKとM200シリーズとの違い
本体機能の高性能化、用途と撮影方法がより具体的になった
M300RTK自体は当然高性能化していますが、全体的にM300RTKはM200シリーズに比べかなり用途が「絞られてきた」という印象を受けます。つまり設計などがより専門的、具体的になってきたということですね。M200シリーズでもすでに
- 消防
- 人命救助
- インフラ点検
が用途としてクローズアップされていましたが、M200の「人命救助できますよ」に対し、M300RTKでは「遭難者を発見し、その位置を地上部隊や管制官に共有できますよ」などそれ以上の具体的な使用が想定され、設計されています。
実際現場では「ただ撮れる」だけでなく、他にも期待されることがいっぱいでてくるんですね。極端に言うと「撮れるのはいいけどさあ、もう少し他になんかできんの?」ということです。その1つが「遭難者の位置座標を別の人に共有する」という機能です。M300 RTKはこの様に現場の意見を反映する形で機能が追加・発展しています。
ズームカメラで撮影した電柱
これらはインフラ点検の撮影にも反映されています。私も経験がありますが、インフラ点検などの撮影って再現性が重要なんですよ。春夏秋冬、季節ごとにいつ撮っても同じ写真が撮れることが大切です。
でも、撮影する側はどう撮ったか忘れちゃうんですよね。何個も鉄塔を撮ったりするとどこでどのように撮影したか忘れた、覚えてないってなります。
前回の撮った写真を現地に持っていって「ここだと思う」「でも、なんとなく違わない?」「いや確かにここから撮った。あれ?でも結局ここからだとわかりにくいってことで場所変えて撮りなおしたんだっけ」
みたいなことってよくやってしまうんですよ。
これをAI、ソフトウェアのほうで記録、コントロールすることで再現性を高めるということですね。これはかなり熱い仕様です。
機体が1種類になって迷わなくなった
M200シリーズでは松竹梅の様に3種類機体が用意されていました。
- M200(梅)・・・デュアルジンバルの使用ができない。RTKには対応していない
- M210(竹)・・・デュアルジンバルが使える。RTKには対応していない
- M210RTK(松)・・・デュアルジンバルが使える。RTKに対応
梱包物が違ったり、M200(梅)に至っては動画で紹介されている機能の殆どが使用できず、正直Matrice200である必要ある?とも思えるモデルでした。車と違い、やはりまだマイナーなので実機を見ることが難しく、情報も少ないのでユーザーが混乱したという話も聞きました。
またM210RTK以外のモデルは機体のアップグレードできない、という致命的なものがありました。M200を使用していて、どうしてもデュアルジンバルが欲しいとなったら、M210かM210RTKを買うしかなかったのです。
それに対し、M300RTKはバリエーションはなく、完全に一本に絞ってきたので買う側は迷わずにすみます。
必要だと思われて「いた」機能の削除、運用時の煩雑さの解消
M200シリーズを運用していると現場でドローンオペレーターなら必ず感じる「煩雑さ」があるのですが、M300RTKはそれらをかなり解消しています。
特に顕著なのがカメラです。M200シリーズにおいて複数のカメラが同時に使用できるデュアルジンバルは画期的なアイデアで有効でもありましたが、実際に現場に出てみると
いちいちカメラを何台もシーンごとにとったりつけたりするのは面倒だし、そのために何台も用意して持ち運ぶのはめんどくさい
と思っちゃうんです。サーマルカメラとズームカメラは同時に搭載できなかったため、仮に必要ならば一度着陸させてカメラを取り替えて再撮影する必要があったんですよね。これって二度手間なんですよ。
必要だし、これしかないのでやらなければいけないのはわかっちゃいるけど端的に言うと「なんか野暮ったい」んです。現場的には「これ一つにしてくれやめんどくせーわ」となります。どうしても。傍からみる分には色々ガチャガチャやっててかっこいいんですが・・・。
これらをオールインワンにしたのがH20シリーズカメラです。この様に、M300RTKは表面化しにくい、だけど「必要だと思ってたけど不評だった」という機能を外し「確実に必要な機能」のみが盛り込まれています。
飛行時間:55分 実稼働40分
これは事実ですが、カメラを搭載すると40分前後になります。カメラを搭載せずに飛ばすというのはまずありえないなので、40分ほどだと考えておけば良いでしょう。
カメラの機種や搭載数、ペイロード(荷物の積載)によって異なりますが、飛行時間は以下の通りです。
搭載カメラ・荷物なし
- 55分
H20シリーズカメラ
- H20T:43分
- H20:45分
デュアルジンバル時
- H20+XT S:40分
- Z30+XT2:39分
- H20+XT2:39分
従来のカメラ(Zenmuseシリーズ)
- XT S:48分
- XT2:45分
- Z30:46分
ペイロード (荷物搭載)
- 最大荷物搭載量2.7Kg:31分
最大伝送距離8km(海外では15km)
Mavicシリーズだとだいたい4km(海外で7km)だったのですが、それがほぼ2倍に伸びています。
OcuSync 2.0というのが、DJIが新たに開発したドローンとコントローラーを接続する電波の送信方式ですが、これにさらに改良を加えた(といわれる)OcuSync 2.0 Enterpriseを使っているので8kmという異常な距離間での操縦が可能になりました。
8km先まで飛ばすなんて怖くてやらねーよ、と個人的には思うのですが最大伝送距離が長いということは裏を返すと接続が強い、送信されてくるライブ画像が綺麗という恩恵があります。
特にドローンからコントローラーに送信されてくる画像の綺麗さはかなり撮影に影響するので、この手の「伝わりにくいけど実はすごい」という技術は相当オペレーターの助けになります。
全ての側面にデュアルビジョンセンサーとTOFセンサーを搭載
M200シリーズは側面にセンサーがついていませんでした。それよりも古いPhantom4Proにはついてたのになんで?と思いましたが今回はきちんとついています(笑)これでM300は全方位無敵になったと言えます。
デュアルビジョンセンサーとToFセンサーの2つで機体の周りにある障害物を検知するという仕組みです。
このセンサー類も大きく進歩していて、機体の全方位が10°ずつの細かい区分にわけられて障害物に対して真横の「どこか」ではなく、「この方向の」「どれぐらいの距離で」ということがコントローラー上でわかる様になっています。
TOF(Time Of Flight)センサー
ToFとは測定形式のことなんでなぜToFをウリにしてるのかよくわかりませんが、ともかく今後伸びる分野でもあるAR(仮想現実)にも使われている技術です。物体までの距離や物体の形を検出するために照射された赤外光やレーザーを受け取って計算する方式のことをToFといいます。
昼夜問わず機能するので、夜間飛行でも効果を発揮します。検知範囲は8mとされています。
デュアルビジョンセンサー
ドローンの「眼」です。立体的に景色を見ることでドローンと物体との距離を検出します。
ヒトは両目で見ることで距離感を掴んでいることはご存知かと思いますが、左目で見ている景色と右目で見ている景色のわずかなズレを脳内で合成することで距離感を正確に掴んでいます。
これをドローンにも応用しているということですね。なので、人間が苦手な暗いところなどはこのデュアルビジョンセンサーも苦手です。
ToFセンサーとデュアルビジョンセンサー、この両方をどのような優先順位で機能させているかは不明ですが、お互いに得意不得意の領域があるのでそこをうまいこと両立させているのだと思います。
次はH20シリーズカメラと撮影モードの解説です!!