地形の情報を空から正確に測定! DJI Zenmuse L1を解説します
こんにちは!スカイアイジャパンの今井です。
DJIからZenmuse L1というM300RTK専用のすごいカメラが発表されましたね。
国内での販売はもう少し先になりそうですが(2021年頭?)、まずはなにがすごいのか?動画などから読み取れる部分を詳しく解説していきます。
Zenmuse L1とは、高精度の立体地図をつくるためのカメラ
Zenmuse L1は大雑把に言うと山、崖、橋、鉄塔、ビルなどの形状を測量レベルの精度で抽出して立体化するための情報を取得するためのカメラです。
LiDAR(ライダー)搭載、地形や人工物の位置や形状を割り出す
精度の高い3Dモデルの地図を作成するには元となるデータが当然必要なんですが、そのデータを集めるための技術が他でもないLiDARです。
これだけだとなんのこっちゃ、という話なので掘り下げていきましょう。
L1の肝となるのがLiDARと言いましたが、L1にはLivox Technology Company製のLiDARが搭載されています。Zenmuse L1という名前はLiDARとLivoxのLからきているのでしょうね。
ちなみにLivox社は聞いたことないと思いますが、2016年にDJIの出資で設立されたLiDARセンサーをメインとした企業です。TOYOTAとDENSOの関係に似てますね。
話がそれました。LiDARセンサーの技術的な原理や詳細は別記事で紹介しますが、簡単にいうとレーザーを照射し跳ね返ってくるまでの時間を計測することで照射対象までの距離を正確に測定する技術です。なので撮影時の気温や風向き、また撮影した写真の読み取り誤差なども最小限に抑えることもできます。
ゴルフ用に手持ちのレーザー距離測定器というのがあるんですが、カップまでの距離を測ったりするんですよね。手持ちのレーザー距離測定器はカップまでの一点の距離しか測れませんが、LiDARは1秒間に24万(もっと多い機種もあり)ものレーザーを同時に広範囲に発射し、同時に跳ね返ってきた24万点のそれぞれの距離を測定します(点群データ)。
これを地質や地形の調査に使おうっていう話ですね。というか、もともとそういうこと用なんですが・・・。
※このLiDARは今後車の事故防止や、自動運転にも応用に期待されるセンサーだということも知っておくといいかもしれません。
折しもiPhone12が本記事を執筆していた2020年10月下旬に発売されましたが、一部の機種にもLiDARは搭載されています。こちらは測定距離は5mほどだそうです。
今までの3Dモデル法とLiDARの違い
ドローンを使って地形を3Dモデル化する場合、撮影した写真に埋め込まれた位置情報(撮影時のドローンの高度、機体の向き、GPS情報)を利用して地形の高低差を出して3Dモデル化するのが一般的でした。
しかしドローンの機体高度などは数メートルの誤差はあるので、精度はそこまで高くはありません(とはいってもそれなりに見れる形にはできますし、簡単にできるのでそれで十分なことはよくあります)。
対しZenmuse L1,LiDARの場合はレーザーが行き来している時間を測定するので当然間違いがありません。
RGBカメラ
DJI HPより抜粋
RGBとは光の三原色であるRed(=赤)、Green(=緑)、Blue(=青)の3色を指します。LiDARは対象までの距離は確実に測定できますが、対象の色まではわかりません。
これはDJIのオフィシャル動画 Zenmuse L1から抜粋したものですが、山に渡された高圧電線(赤色の線)と山の様子をL1で測定し、そのデータを元に3Dマッピングした様子です。
色は高低差などをさしているのであって、現実世界の色とは違います。
流石にそれだとわかりにくい場合もあるし、現実の世界とのズレもあるなどあるので予めRGBカメラで色情報も同時に取得しておき、3Dマッピング時にその色情報を付与することでカラーの3Dマッピングを作成する、ということですね。
レスキューミッション
公式動画で紹介されていますが、遭難者の位置がわかっていてもそこまで安全に救助隊がいけるかどうか、ルートがどういう風になっているか、は現地までいかないとわかりません。しかし、L1を使えば要救助者までのルートも現地で作成可能・・・
と書いておいて、私はこんな経験がないのでこれがどれほど有効なのかはわかりません(笑)。公式動画では砂漠地帯を使っていますが、これはわかりやすいからで、実際日本の様な森が多いところではどうなんでしょう?
レーザーが葉っぱを通過できず不完全なルートを作成してしまうということは有りえますし、そもそもそんなに地図情報がまったくないなんてことあるかな?とも思います。
ただ、その一方で地図情報というのはあくまで「地図を作成した時」のものなので「今」ではありません。冬は木の葉が落ちるので空から地表がよく見えますが、夏は逆です。以前、救助のプロの方からお話を聞く機会がありましたがやはりGoogle Mapを多様する様です。しかし、肝心のGoogle Mapの航空写真が「いつ」撮られたのかは場所によるし、数年前のこともあるので「今」の地図があると助かるとも言っていました。
なので、ライブの地図が3Dでつくれるのは非常に強みとなりうる、とも思います。このあたりは今後の利用法でわかってくると思います。
LiDARは夜間に強い
DJIの公式動画のレスキューミッションの時は「夜間」です。この動画では言及はされていませんがLiDARは周囲の明かりに影響を受けにくいことが特徴として挙げられます。むしろ、太陽光がない夜間のほうがノイズが少なく精度が出やすいとも言われています。
これから用途が考えられていく
測量の分野もそうですが、今までは「歩く」という方法しかありませんでした。対し、今は空からいろいろな情報が取得できる様になりました。
今、まさに用途が検討され、発展していくので今後に本当に期待できる分野です。