ドローンどんと来い!

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DJIの超高性能 H20Tカメラ レビュー1 !!カメラ編

こんにちは、スカイアイジャパンの今井です。

 

 本記事ではDJIの最新の機体であるM300RTKと同時に発売されたH20Tカメラの機能の紹介を実際の使用感も含めてレビューします。

とにかく鬼のような機能をたくさん搭載しているので全部書ききるのは大変ですが、できる限り機能を実例と併せて書いています。

撮影は全てこれに任せておけばOK オールインワンのH20カメラ

まずはH20シリーズカメラの概要から。

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 Zenmuse H20シリーズはこれ一台で異なるレンズを使って同時に異なる撮影ができ、かつさらにそれをアプリケーション(DJI Pilot)を通じて特殊な撮影法(撮影モード)ができる、という特徴が挙げられます。

異なるレンズによる撮影

  • 広角カメラ
  • ズームカメラ
  • サーマルカメラ(熱赤外線カメラ)※ただしH20Tのみ
  • レーザーレンジファインダー(レーザー距離測定)
  • ナイトビジョン(暗視装置)

DJI Pilotアプリを使った特殊な撮影法(撮影モード)

  • AIスポット確認(RTKモードのみ)
  • 高解像度グリッド写真
  • ピンポイント
  • スマートトラック

H20シリーズの持つ能力と設計思想 

 H20シリーズに搭載されているカメラの性能はそれぞれ単体だけ見てもピカイチで本当によくできています。ただ、このH20シリーズは上述したカメラ機能をサポートする

  • 撮影モード
  • 同時撮影

利用することで相乗効果となり、真価を発揮していきます。それぞれのカメラ機能を独立で理解することも良いですが、ワンセットでなにができるのかを考えた方がより魅力が伝わります。 

これまでのユーザーのフィードバックを反映した設計

 M200シリーズなどを通して得てきたユーザーのフィードバックがここに凝縮されていることがわかります。これまで私も

  • 広角カメラ(X4S,X7)
  • サーマルカメラ(XT)
  • ズームカメラ(Z30)

をマトリスM200シリーズで使ってきましたが調査などで単体で使用することはほとんどなく、デュアルジンバルとして「広角カメラ」と特殊用途のカメラ(サーマル、ズーム)を組み合わせて使っていました。

しかし、その一方で構造上特殊なカメラの片方が「使えない」ということがあったり、カメラの機能としてはできるけど実際に撮影するのは技術的に難しく現実的ではなかったり、いちいちカメラを複数用意して撮影の度に交換する煩わしさがあったのも事実です。

しかし、これらの問題がH20カメラでは全て解消されています。私が思う限りH20カメラ(とそのサポート機能)があればほぼほぼ現場でやりたい全てのことができるんじゃないでしょうか。

 

さて、まずは実際にどんな画像が撮れるのか一度見てもらいます。

 

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 こんな感じです。すごくないですか!?これらが同時に一回の撮影で撮れてしまうんです。さてそれでは各カメラや撮影モードの解説に移りまっす。

広角カメラ(Wide)

 これでパンフレットや宣伝用の撮影もできそうな解像度です

となっていますが、カタログスペックだといまいちピンとこないと思うので実際に撮影した画像をさらに幾つか掲載します。

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花粉を撒き散らす杉の木(オス)

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ブログなんで少し解像度が落ちますが、おおむねこんな感じです。

12MP 1/2.3 CMOSセンサーなのでどうかな?と思っていましたが非常に綺麗に、シャープに写っていてびっくりしました。

調査用ならこれで十分ですし、静止画だけならこれでパンフレットや宣伝用の撮影もできそうな解像度です。というか、できますね。ちなみに同時撮影しているのでこの広角カメラで撮られた画像の他に、ズームとサーマルの写真もあります。

23倍ズームカメラ(Zoom)

人が登ってでも確認できないところですら肉眼以上に見える

  • 23倍ハイブリット光学ズーム、
  • 最大200倍ズーム
  • 20 MP 1/1.7インチCMOSセンサー
  • 動画解像度:4K/30fps

なんと驚きの光学23倍です。Z30は光学30倍ズームでしたが、どれほど違うでしょうか。百聞は一見にしかず、見てみましょう。

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さっささっさ飛び回っているのでわかりにくいですが、20m先の虫でも飛んでいることが

あきらかにわかります

解像度の高さもあって広角カメラでは絶対にわからない様な詳細まではっきりとわかります。杉の木なら種子の形状、木肌の様子までわかります。

撮影後の拡大もOKの高解像度

 逆に、広角カメラで撮影された画像を使って拡大するとこのようになります。

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400m先の公園

 広角カメラの場合、拡大しても小屋かどうかや、公園の滑り台の色まではわかりません。比較してみて改めてズームカメラの力もわかるのではないでしょうか。

これはかなりの利点です。撮影後に気になる部分があったりして「もう少しズーム(拡大)できんの?」という話はよくありますが、H20はズームカメラの場合撮影後にパソコンなどで拡大しても耐えうる解像度があります。

対しZ30は光学30倍でしたが画素数が200万画素と少なく、撮影した画像をあとからパソコンなどで拡大するのは厳しいものがありました。

Phantom4ProやMavic2Proが本当に調査・点検など使用できないのか、できる限り木に近づいて撮影してみる、ということを無理してやったことがありますがやはり限界がありました。それに対してH20Tなら、そんな無理をせずともそれ以上の写真を安全に撮ることができます。

  

捜索活動時の移動の無駄と降下時のリスクを減らすことができる

 捜索活動ではドローンを闇雲やたらに飛ばすよりも、できる限り移動は少なく定点から機体とカメラの向きだけを変えながら気になるものを見ていく方が情報は混乱せずにすむことがわかってきています。

ただし広角カメラのみでそれをすることは不可能に近く、どうしても「あれなんだろう」「近づいて確認しよう」というプロセスが生じてしまいます。対し、ズームカメラがあればそういったことをせずにみます。

例えば、上の写真で250m先の小屋がズームで写っていましたが広角カメラで「小屋だ」と確定するにはそこまで飛んでいって、機体を降下させて確認する時間と手間暇がかかります。

オペレーターは焦る

 捜索活動の練習をしていた時のことです。遭難者役の人をオペレーター(ドローン操縦士)が発見したのですが、様子を見るために周りの環境を確認せずドローンを急降下させることが何度もありました。

というのも、オペレーターも「早く助けてあげないと」という焦りがあるのでどうしてもそうしてしまうんですね。

一人だけではなかったので個性ではなく人の心理なのでしょう。仕方がないと思いますが、当然周りを確認せずにドローンを降下させることはリスクを伴うので、このあたりもズーム機能付きカメラなら回避できます。

 

サーマルカメラ(熱赤外線カメラ)※H20Tのみ

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夜間撮影

カラー画像では絶対にわからない異常な温度の箇所を抽出できる

サーマルカメラはその場でどうこうよりデータを持ち帰って分析するという側面が強いので、ここではあくまで現場でどれぐらいできるのか、という点について解説します。スペックは下記の通り。

  • DFOV(対角視野):40.6°
  • 解像度:640×512
  • フレームレート:30fps
  • 温度分解能:≤ 50mk@f1.0 (NEDT)

 離れたところから温度を測定できるのはサーマルカメラの特徴です。コロナ対策として入店された方の体温を検知するカメラがありますが、これもサーマルカメラの持つ「遠方から温度を測定する」という機能に着目したものです。

サーマルカメラのスペックは一般的ではなく、特にわかりにくいので(温度分解能≤50mkとありますが、わかんないなですよね)ピンとこないですがH20Tに搭載されたサーマルカメラは現状手に入るサーマルカメラの中ではかなり高性能の部類に入ると思っていただければOKです。サーマルカメラは

などで大きな力を発揮するということ、またワイド・ズームのカラー画像との比較がすぐにできるのも他にはないメリットです。

 DFOV(対角視野):40.6°

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 XT2では、カラー画像とサーマルカメラの画像のオーバーレイモードがありましたが今回はなくなりました。

 これはフォトショップでワイドとサーマルカメラの画像をオーバーレイ化したものです。サーマルカメラのほうが撮影できる範囲は狭いですね。だいたい、広角カメラのほうが2.3倍サーマルカメラより広いです。

 

スポット測定

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スポット測定 タワーの天辺の温度が29℃とわかる。DJIより抜粋

任意の一点の温度を測定します。画面をタップすれば、そのタップした場所の温度が○○℃という形で表示されます。

エリア測定

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エリア測定 任意の範囲(白枠)内の最高温度、最低温度、平均温度を抽出する

DJIより抜粋

任意の「範囲内」で、

  • 最も高温の部分
  • 最も低温の部分
  • 平均温度

を抽出します。チェックする範囲や場所はタップ操作で変更可能で、DJIのサンプル画像では任意の範囲(白い枠)内でタワーの天辺が一番温度が低く(15.0℃)、その横のビルの天辺が最も高温(28.0℃)であることがわかります。

広角画像と比較する

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電柱の分岐リアクトルの温度(水色のところ)や、道路・森との温度差もカラー画像と比較して一目瞭然です。

環境調査で、アスファルトと森林の温度差をみることがありますがこういった形で比較すると感覚的にもわかります。これはドローンならではの強みの一つですね。

 

迷ったらサーマルカメラのあるH20T

 H20シリーズは2種類あって、サーマルカメラ(熱赤外線)機能があるかないかの違いしかありません。向かって左がH20,右がH20Tです。値段はショップさんに問い合わせていただくしかないのですが、私個人の見解では無理してでも「サーマルカメラ」の機能のあるH20Tにした方がいいと思います。

それではまず広角、ズーム、サーマルカメラはどれぐらい見えるのか・・・の実例を紹介します。その後、各機能の詳細を解説します。

 

また、コントローラーに転送されてくる映像の解像度の高さがモロに影響を受けるのもサーマルカメラの特徴です。これはOcusync Enterprise(やOcusync2.0)はコントローラーに転送される映像の解像度と、サーマルカメラの解像度(640×512)

ライトブリッジ(Phantom4Pro,Inspire2,Matrice200)と比較して段違いに良いからです。

  

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次は各種撮影法とレーザー距離測定器!!